本記事では、独学で第1回登録日本語教員試験に合格した私が、どのように勉強したのかをご紹介します。
登録日本語教員試験の内容
まず、登録日本語教員試験の範囲や内容をご紹介します。
試験範囲
登録日本語教員試験には「基礎試験」「応用試験」の2種類があります。
大まかな試験範囲としては、「日本語教育能力検定試験と同じ」です。
ただ、
・登録日本語教員試験には記述式問題がなく、すべてマーク式である
・登録日本語教員試験の方が、「現場でどう動くべきか」的な設問が多い印象
など、異なる点ももちろんあるので、詳しく見ていきます。
基礎試験
日本語教育を行うための基礎的な知識が出題されます。
ただ、基礎的 = 簡単 という訳ではないので、ご注意ください。
ボーダーも8割(100点満点中80点)と高く、ハードルの高い試験です。
※全体のボーダーだけでなく、各分野の得点が6割以上である必要もあります。
★ここでのポイントは、「教科書に出てくる全ての用語について、簡単に自分で定義できる」レベルまで勉強することです。
令和6年度の出題範囲は以下のとおりです。
範囲 | 項目 | 基礎試験での出題割合 |
社会・文化・地域 | 世界と日本 | 1〜2割 |
異文化接触 | ||
日本語教育の歴史と現状 | ||
言語と社会 | 言語と社会の関係 | 1割 |
言語使用と社会 | ||
異文化コミュニケーションと社会 | ||
言語と心理 | 言語理解の過程 | 1割 |
言語習得・発達 | ||
異文化理解と心理 | ||
言語と教育 | 言語教育法・実習 | 3〜4割 |
異文化間教育とコミュニケーション教育 | ||
言語教育と情報 | ||
言語 | 言語の構造一般 | 3割 |
日本語の構造 | ||
コミュニケーション能力 |
応用試験
基礎的な知識・技能を活用した問題解決能力を測られます。
応用問題は2部制となっています。
・第1部が聴解問題
・第2部が読解問題
という構成です。
応用問題では横断的な知識・技能のレベルを測ることを目標にしているため、試験範囲の提示はありません。
ボーダーは6割(110点満点中66点)で、基礎試験よりハードルが低い印象です。
★ここでのポイントは、聴解問題でしっかり得点すること・時事問題までしっかり勉強しておくことです。
試験時期・試験時間・受験料
試験時期
令和6年度は11月に日本全国で集団受験・紙ベースの試験として実施されました。
ただ、今後はCBT方式(パソコンでマークしていくスタイル)でいつでも受験できるように制度が変更される見通しです。
このような情報は日本語教育機関認定ポータルにて順次発表されるのではないかと思っています。チェックしておくと便利です。
試験時間
試験 | 試験時間 | 出題数 | 出題形式 | 配点 |
基礎試験 | 120分 | 100問 | 選択式 | 1問1点 |
応用試験(聴解) | 50分 | 50問 | 選択式 | 1問1点 |
応用試験(読解) | 100分 | 60問 | 選択式 | 1問1点 |
受験料
受験料は以下の通りです。
基礎試験・応用試験 | 18,900円 |
応用試験のみ | 17,300円 |
第1回 登録日本語教員試験の結果
第1回(令和6年度)登録日本語教員試験の結果概要が発表されました。
受験者数・合格者数・合格率
全体の合格率は43.5%と発表されていますが、内訳は以下の通りです。
基礎試験 + 応用試験の合格率が非常に低いです。
受験者数 | 合格者数 | 合格率 | |
基礎試験+応用試験 | 3,947名 | 366名 | 9.3% |
応用試験のみ (基礎試験免除者) | 7,750名 | 4,727名 | 61% |
この結果を受け、SNSでは、「基礎試験が難しすぎるので、基礎試験免除のために課金(養成講座受講)した方が良い」という意見が多くありました。
私は日本語教育に携わっている期間が長いのでなんとか合格できました。
ただ、これからゼロスタートする場合、お金に余裕がある方は養成講座の受講がおすすめです!
※2033年3月まで適用されている経過措置Cルートの対象となります。
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登録日本語教員試験に独学で合格するまでのロードマップ
続いて、登録日本語教員試験に独学で合格するまでのロードマップをご紹介します。
前提・全体像
前提として、私の場合は以下のような経歴です。
・大学で日本語教育を専攻
・日本語教育能力検定試験合格済
・420時間の日本語教師養成講座受講済
・国内外での日本語教育経験
・国内での外国人人材紹介業での経験
このように、日本語教育に携わってきた時間が長いため、ゼロからスタートする方にぴったりのロードマップではないかもしれません。
ただ、日本語教育の知識や経験がある方や、ゼロからでもしっかり独学できる自信のある方には参考になる部分もあると思います。ぜひご一読ください!
上記のような経歴を持つ私の場合、勉強時間は80〜100時間程度でした。
平日1〜2時間、週末3時間程度を、時々サボりながら1ヶ月続けました。
1. 日本語教育能力検定試験の教材で勉強
先述の通り、登録日本語教員試験と日本語教育能力検定試験は範囲がかなり重複しています。
また、登録日本語教員試験は歴史が浅く、広く普及している教材がまだありません。
そのため、種類の豊富な日本語教育能力検定試験用の教材の中から、自分のお気に入りを選んで勉強を始めましょう。
教材を選ぶ際は以下のポイントを重視してください。
・全範囲を網羅していること
・試験範囲区分で整理されていること(苦手・得意分野を見つけるため)
・最新版であること(時事問題に対応するため)
・イラストや解説の仕方が、自分好みであること(モチベーションに直結するため)
勉強する際のポイントは、以下の通りです。
・1周目は全体をさらっと読んでみる。
・2周目から、覚えていない用語を暗記ノートに書き写す。(詳細は後述の3で解説)
・教材内の確認問題は全て解けるようになるまで解き直す。
2. 登録日本語教員試験の教材で勉強
次に、登録日本語教員試験用の教材でも勉強をします。
私はこちらの教材しか見つけられなかったので、こちらを使いました。
教科書というよりは、
・用語の暗記確認問題
・演習問題
という感じの内容です。
いきなりこの教材から勉強を始めると、試験範囲全体が見えないまま個別の用語をとにかく暗記する、というスタイルになってしまいそうです。これではかなり混乱してしまうと思います。
そのため、「1. 日本語教育能力検定試験の教材で勉強」を終えてから取り組むと、とてもスムーズに勉強できます。
1で試験範囲全体の知識を身につけた後、2で試験の練習をしていく、というイメージです。
ここでの勉強ポイントは
・1で全体の知識をつけていても、練習問題を解くのは結構難しいものです。
全然問題が解けなくても諦めず、解説をしっかり読む。
わからない部分は1の教材に戻って周辺知識を含めて覚え直す。
根気よく取り組むつもりで勉強しましょう。
・また、引き続きわからない用語があれば暗記ノートに書き写す。(詳細は後述の3で解説)
3. 暗記ノートを作成・繰り返し暗記チェック
先述の1,2のポイントに記載した「暗記ノート」について、詳しく解説します。
わからない用語があった時、なかなか覚えられない用語がある時、それらを「暗記ノート」にまとめてください。
暗記ノートは常に持ち歩けるよう、小さめ・軽めのノートがおすすめです。
【暗記ノートの作り方・使い方】
①お気に入りのノートと、赤シート(受験生が持っているようなやつ)を100円ショップで購入。
②ページを半分に折り、左側に黒字で用語、右側に赤字で用語の定義や解説など(覚えたい内容)を記載します。
③いつでもどこでも、このノートと赤シートを持ち歩いて、用語を暗記します。
④完璧に覚えた用語にはチェックをつけておきます。
チェック付きの用語は時々見返す程度でOKです。
(時々見返すと、意外とまた忘れていたりするので、時々は見返してあげてください。)
ここでのポイントは
・覚えられない用語は何度も繰り返し見返す。
(何度も見る・繰り返し見ることで、記憶の定着につながります)
・「空いた時間にやろう」と思うと、なかなかやる気にならないので
「朝カフェで30分やる」「電車で座れたら必ずノートを開く」のように、
自分ルールを決めましょう。
この暗記ノートは受験日当日も会場に持っていくことをおすすめします。
「私はこの暗記ノートを続けてきた」という自信にもつながりますし、自分の苦手分野を最後に確認することで、「苦手はもう潰した」「他は得意分野だから大丈夫」という気持ちにもなれます。
4. 登録日本語教員試験のサンプル問題、日本語教育能力検定試験の過去問
最後はサンプル問題や過去問を解きまくってください。
・設問量の多さ、受験時間に慣れる
・このくらい解けたら合格だなという感覚を身につける
ためにも、できるだけ実際の試験と同じような環境で勉強しましょう。
かなり設問が多いので、意外と体力勝負な部分もあります。
少なくとも2回分くらいは、全量の試験問題を通して解いてみてください。
安定して8割得点できるようになれば、準備万端です。
また、ここでも「わからない用語」「何度も間違える問題」は暗記ノートに書き写し、毎日繰り返し見返してください。
暗記ノートは受験が終わる瞬間まで、書き加え続け、見返し続けてください。
まとめ
本記事では、登録日本語教員試験に独学で合格するまでのロードマップを紹介しました。
独学で合格を目指している方にとって、少しでも参考になる部分があれば幸いです!
「独学で勉強するのは心が折れそう…」
「少しでも受験の負担を減らしたい…」
という方には、養成講座の受講がおすすめです!
「登録日本語教員の資格取得に係る経過措置」として、「必須の50項目に対応した課程修了者」は登録日本語教員試験の基礎試験が免除となります。(経過措置Cルート)
※経過措置Cルートは2033年3月までです。
経過措置は期間限定の対応です。「養成講座を受講し、基礎試験を免除したい!」とお考えの方は、なるべく早くのご受講をおすすめします。