こんにちは!日本語教師のMilkyです。
やさしい日本語の無料教材ってまだあまり多くないですよね。
本記事は、
✅ N3レベルで理解できる『鼻』(芥川龍之介)
✅ 単語や文法の解説
このような内容になっています。
どこかでの日本語教室で使っていただけたら幸いです😇❤️
【無料】やさしい日本語で『鼻(はな)』を読もう【N3 読解テキスト】
オリジナルの『鼻』は青空文庫でご覧になれます。
鼻
① 内供(ないぐ)さんの鼻
「内供(ないぐ)」という人の鼻は、とても有名です。鼻の長さが約15〜18センチもあり、口の上からあごの下まであるからです。まるで細長いソーセージが顔の真ん中からぶら下がっているように見えます。こんなにすごい鼻は他にはありません。
内供(ないぐ)さんは、昔からお寺で働いています。でも、彼は自分の鼻が気になっていました。でも、人には言えませんでした。自分が鼻を気にしていることが人に知られるのが嫌だったのです。彼は、普段の話題で「鼻」という言葉が出てくるのを一番恐れていました。
内供(ないぐ)さんが鼻を気にする理由は2つあります。
1つは、鼻が長いと実際に不便だったからです。食事の時にも、鼻が食べ物に入ってしまって、一人で食べることができませんでした。そこで、内供(ないぐ)さんは弟子(でし)に鼻を上げてもらうことにしましたが、それも簡単じゃありませんでした。ある時は、弟子(でし)がくしゃみをして、手が震えて鼻をごはんの中に落としてしまったこともありました。
でも、これが内供(ないぐ)さんが鼻を気にする大きな理由ではありませんでした。本当は内供(ないぐ)さんが鼻を気にするのは、自分のことを人に知られるのが嫌だったからです。
その町では、内供(ないぐ)さんの鼻が大きすぎるため、内供(ないぐ)さんは特別な人だと思われていました。彼の鼻のせいで、誰も彼と結婚したがらないと思われていました。中には、彼が僧侶(そうりょ)になったのは鼻のせいだと言う人もいました。
でも、内供さん自身は、僧侶(そうりょ)であることが理由で、鼻の悩みが減ったとは思っていませんでした。彼の自尊心は、結婚などの結果に左右されることはできず、非常に繊細(せんさい)なものでした。そこで、内供さんは自分の自尊心(じそんしん)を回復しようと、いろいろな方法を試みたのです。
英語訳
The nose of a man named Naigu is very famous. It’s about 15 to 18 centimeters long, stretching from above the mouth to below the chin. It looks as if a long, thin sausage is hanging from the center of his face. Such an amazing nose may be unique.
Naigu has been working at a temple since ancient times. However, he was concerned about his nose. But he couldn’t tell anyone. He didn’t want anyone to know that he was worried about his nose. He was most afraid of the word “nose” coming up in everyday conversation.
There are two reasons why Naigu is concerned about his nose.
One is that having a long nose was actually inconvenient. Even during meals, his nose would get in the way and he couldn’t eat alone. So Naigu decided to have his disciple lift his nose, but that wasn’t easy either. At one point, the disciple sneezed and his hand trembled, causing Naigu’s nose to fall into his rice.
But this wasn’t the main reason why Naigu was concerned about his nose. The real reason was that he didn’t want anyone to know about it.
In that town, Naigu was thought to be a special person because his nose was too big. Because of his nose, no one wanted to marry him. Some even said that he became a monk because of his nose.
However, Naigu himself did not think that becoming a monk reduced his nose-related worries. His self-esteem was too delicate to be influenced by things like marriage. So Naigu tried various ways to restore his self-esteem.
② 内供(ないぐ)さんのなやみ
内供(ないぐ)さんは、自分の鼻を短く見せる方法を考えました。でも、鏡を見たり、指を当てたりしても、なかなかうまくできませんでした。むしろ、努力した分、ますます鼻が長く見えることもありました。そんな時には、がっかりして鏡を閉じ、もとの机に戻って、お経(きょう)を読み続けました。
内供(ないぐ)さんは、自分の鼻が大きすぎることが気になっていました。彼は、自分と同じように鼻が大きすぎる人を探していました。寺には、たくさんの僧侶(そうりょ)や信者(しんじゃ)がいて、内供(ないぐ)さんはそこで人々の鼻を探しました。
しかし、似たような鼻を持つ人は見つからず、内供(ないぐ)さんはがっかりしました。彼は、鼻を触ってしまうことがあり、そのたびに赤くなってしまいました。
内供は鼻を短くする方法を考えたり、色々な薬を飲んでみたりしました。でも、どうしても鼻は約15〜18cmの長さを保ち続けました。
英語訳
Naigu tried to think of ways to make his nose look shorter. However, even when he looked in the mirror or pressed his nose with his fingers, he couldn’t do it well. In fact, the more he tried, the longer his nose seemed to appear. At such times, he would close the mirror disappointedly, return to his desk, and continue reading sutras.
Naigu was worried that his nose was too big. He looked for people with similarly big noses like him. There were many monks and believers in the temple, and Naigu searched for people’s noses there.
However, he couldn’t find anyone with a similar nose, and Naigu was disappointed. He sometimes touched his nose, which made it turn red every time.
Naigu tried to think of ways to make his nose shorter, tried taking medicine, and even tried putting rat urine in his nose. However, his nose continued to stay about 15-18 cm in length no matter what he tried.
③ 鼻を小さくする方法
ある秋のこと、内供(ないぐ)さんの弟子(でし)で京都へ行った僧侶(そうりょ)が、知り合いの医者から鼻を短くする方法を教えてもらいました。
内供は、自分の鼻を短くするための方法をやることになりました。その方法は、沸(わ)かした熱いお湯に鼻を入れ、人に踏んでもらうことでした。
弟子の僧は、桶(おけ)へ鼻を入れるために穴を開けた蓋(ふた)を作り、鼻だけを湯につけました。しばらくすると、弟子(でし)の僧侶(そうりょ)が「もうゆでたでしょう。」と言いました。
内供(ないぐ)さんは笑っているように見えましたが、実は鼻がとても痛くてかゆかったんです。弟子(でし)の僧侶(そうりょ)が鼻を踏み始めて、内供(ないぐ)さんは痛かったけれど、我慢(がまん)していました。
そして、しばらくして、小さな粒(つぶ)のようなものが鼻から出てきました。弟子の僧はそれをスプーンで取りました。
脂(あぶら)が鼻から出てきました。弟子(でし)の僧侶(そうりょ)は、脂(あぶら)が全部出るまでゆでるように言いました。内供(ないぐ)さんは不満そうな顔をしてたけれど、言われるままに二度ゆでました。
すると、鏡で見たら鼻が短くなっていました!でも、また長くなるかもしれないと不安に思いました。しかし、経(きょう)を唱(とな)えたり、食事をしたり、鼻を触ったりして確認しても、鼻は唇の上にしかなくて、下に下がってきませんでした。
次の日、目が覚めたら鼻をなでましたが、鼻はまだ短かったので、内供(ないぐ)さんはすごく安心した気持ちになりました。
英語訳
One autumn, a monk who was a disciple of Naigu went to Kyoto and learned a way to shorten his nose from a doctor he knew.
Naigu decided to try the method of putting his nose in hot boiling water and having someone step on it to make it shorter. The monk made a lid with a hole in it to put Naigu’s nose in the bucket with hot water. After a while, the monk said, “It must be boiled enough.”
Although Naigu appeared to be laughing, his nose was actually very painful and itchy. The monk began to step on Naigu’s nose, and even though it hurt, Naigu endured the pain. Eventually, a small grain-like substance came out of his nose, and the monk took it out with a spoon.
It was fat that came out of Naigu’s nose. The monk told him to boil it again until all the fat came out. Naigu was dissatisfied but followed the instructions and boiled it twice.
When he looked in the mirror, his nose was shorter! However, he worried that it might grow long again. But even after reciting sutras, eating, and touching his nose to confirm, his nose only stayed above his lips and did not droop down.
The next day, when he woke up and touched his nose, it was still short. Naigu felt extremely relieved.
④ 小さくなった鼻
ある子供が、内供(ないぐ)さんの鼻が短くなっていることに気づきました。最初は喜んでいたけれど、他の人たちが自分を変な目で見たり、笑ったりするようになりました。
内供(ないぐ)さん何が原因か考えました。以前と見た目が違うからかもしれないと思いました。でも、どうして自分の鼻が短くなったのに笑われるのか、わかりませんでした。内供(ないぐ)さんは時々、昔の自分の写真を見て、悲しくなっていました。
人はいろいろな気持ちを持つことがあります。例えば、誰かが困っていたら、同情(どうじょう)して助けたくなる気持ちがあるけど、その人が元気になってしまうと、何か物足りなさを感じたり、逆にその人を自分と同じように不幸にしたくなることもあるのです。
内供(ないぐ)さんは、寺で働いている人たちが自分勝手なことをしているのが気に入らなくて、だんだん不機嫌(ふきげん)になってきました。誰にでも怒鳴(どな)ったり、悪口を言ったりするようになって、特に笑う子供には怒りがたまっていました。ある日、内供(ないぐ)さんはその子供の顔を棒(ぼう)で 殴(なぐ)ってしまいました。その棒は、昔鼻が長かったときに使っていた鼻持ち上げの棒でした。
内供(ないぐ)さんは、鼻が短くなってしまったことで、ますます恨(うら)みが増していました。ある夜、風が吹いて、寒さが増して寝られなくなった時、内供(ないぐ)さんの鼻がかゆくて触ると熱くて水っぽく感じました。
内供(ないぐ)さんは、短い鼻が原因で病気になったのかもしれないと思いました。でも、翌朝、目を覚ますと、寺の中が美しい景色で包まれていました。
そして、内供(ないぐ)さんは自分の鼻が元に戻ったことに気づいて、心がすっきりした気持ちになりました。それから、内供(ないぐ)さんは、もう自分の鼻で誰にも笑われることはないだろうと思いながら、長い鼻を揺らしながら立っていました。
英語訳
A child noticed that Naigu-san’s nose had become shorter. At first, the child was happy, but then other people started looking at him strangely and laughing.
Naigu-san thought about what might have caused the change. Maybe it was because he looked different from before. However, he didn’t know why his nose had become shorter.
Sometimes, Naigu-san looked at old photos of himself and felt sad. The answer to this problem remained unknown.
It is understood that people have various feelings. For example, if someone is in trouble, they may feel sympathetic and want to help, but when that person becomes well again, they may feel unsatisfied or even want to make that person unhappy like themselves.
Naigu-san became increasingly unhappy with the people working at the temple for their selfish behavior. He became more and more irritable, shouting at and bad-mouthing anyone, and was especially angry with laughing children. One day, Naigu-san hit the child’s face with a stick, which happened to be the nose-lifting stick he used when he had a long nose.
Naigu-san became increasingly resentful about his short nose. One night, when the wind blew and the cold increased, he couldn’t sleep because his nose was itchy, hot, and watery when touched.
Naigu-san thought that his short nose might have caused him to get sick. However, the next morning, he woke up to a beautiful view of the temple.
Then Naigu-san realized that his nose had returned to its original length, and he felt relieved. From then on, he stood up with his long nose, thinking that no one would laugh at him with his nose again.
単語
ぶら下がる (ぶらさがる) hang
恐れる (おそれる) fear
弟子 (でし) apprentice
くしゃみ sneeze
僧侶 (そうりょ) monk
繊細な (せんさいな) delicate
自尊心 (じそんしん) self-esteem
お経 (おきょう) Sutra
信者 (しんじゃ) believer
保ちます (たもちます) keep
沸かします (わかします) boil
桶 (おけ) bucket
ゆでます boil
唱えます (となえます) recite
なでます stroking
同情 (どうじょう) sympathy
物足りなさ (ものたりなさ) unsatisfactory
不機嫌な (ふきげんな) displeased
怒鳴ります (どなります) bellow
文法解説
他にありません
Aの他にない = Aだけ と言う意味です。
こんなにすごい鼻は他にはありません。
→ こんなにすごい鼻は 内供(ないぐ)さんの鼻だけです。
努力した分 (N2)
Vた分 / Vた分だけ 〜 = Vた程度〜 と言う意味です。
努力した分、ますます鼻が長く見えることもありました。
→ 努力したのと同じくらい、ますます鼻が長く見えることもありました。
ゆでるように言いました (N3)
Vるように言う = 「Vてください」と言う と言う意味です。
脂(あぶら)が全部出るまでゆでるように言いました。
→ 「脂(あぶら)が全部出るまでゆでてください」と言いました。
最後に
この記事では、
✅ N3レベルで理解できる『鼻』(芥川龍之介)
✅ 単語や文法の解説
をご紹介しました。
N3レベルを勉強している方の参考になれば幸いです👏👏