【論文紹介】ベトナム人技能実習生への日本語教育の現状 - にほんご Study

【論文紹介】ベトナム人技能実習生への日本語教育の現状

【論文】ベトナム人技能実習生への日本語教育、日本語学習の現状 役立つ知識

こんにちは!日本語教師のMilkyです。

本記事は、

・ベトナム人技能実習生がどのくらい日本語が話せるか知りたい

・ベトナム人技能実習生がどのように日本語を勉強しているのか知りたい

・ベトナム人技能実習生の日本語学習に対するリアルな心の声を聞きたい

このような方向けの内容になっています。本記事では、ベトナム国家大学ハノイ校日越大学の修士論文の記載事項をいくつか引用しています。詳細まで気になる方はこちらをご覧ください。

参考論文

在日外国人労働者に対する日本語指導研修の改善―ベトナム人技能実習生の日本語習得の現状を事例として―(2020, PHAN)

この記事を書いているわたしは、日本語教育学科を卒業しており、現役の日本語教師です 👩‍🏫また、ベトナムの送出し機関にも滞在していた経験があります!ベトナム人技能実習生の日本語教育について知りたい方のお役に立てたら幸いです◎

【論文紹介】ベトナム人技能実習生の日本語教育、日本語学習の現状

それでは、まずは技能実習生について簡単に解説します。

技能実習生とは

まず、技能実習生とは「外国人技能実習生制度」という制度を利用して来日し、日本で就労している外国人の方のことを言います。

「外国人技能実習生制度」は、発展途上国から来る外国人の方に日本の技能を教え、日本の技術を自国に持ち帰ってもらう、というのが目的の制度です。

実際には、そのようなボランティア精神で技能実習生を受け入れている日本企業は少ないです。人手不足の現場で、労働力を補うために技能実習生を雇い入れている会社が多いというのが現状です。

技能実習生の日本語教育について話をする前に、いくつかの用語を紹介しておきます。これらの用語が分からなければ、下記の解説文は理解できなくなってしまいますので、しっかり押さえておいてください。

技能実習生

日本の技能を学ぶ(日本で働く)ために来日する外国人の方。

送出し機関

技能実習生を日本へ送り出す現地の人材斡旋会社。来日前の技能実習生への日本語教育は送出し機関が行う。

実習実施者(受け入れ企業)

技能実習生を雇い入れ、日本の技能を教える企業。

監理団体(組合)

実習実施者(受け入れ企業)が技能実習生を円滑に受け入れられるようにサポートする会社。入国後の技能実習生への日本語教育を担う。

ベトナム人技能実習生の来日前の日本語教育の現状

それでは次に、ベトナム人技能実習生の来日前の日本語教育の現状について解説していきます。

ベトナム人技能実習生への日本語教育期間

技能実習生は来日する前に、送出し機関と呼ばれる現地人材斡旋企業で日本語を勉強します。ベトナム人技能実習生の大多数が、送出し機関で初めて日本語を勉強を始めます

一般的には、

ベトナム人の方が技能実習生を希望し、送出し機関へ連絡

送出し機関による面接、筆記試験
↓合格
日本語学習を開始
↓2-3ヶ月後
日本の受け入れ企業の面接、実技試験等
↓合格
日本入国までの間、日本語学習を続ける
↓2-3ヶ月後
入国

このような流れになっています。

ですので、ベトナム人技能実習生の多くは現地で4-6ヶ月ほど日本語を勉強していることになります。平均的な学習能力を持つ方であれば、この期間に日本語能力はN5〜N4レベルに達します。

※もちろん個人差はありますが、
N5レベル:簡単な単語で意思疎通ができる
N4レベル:文レベルでなんとか会話ができる

というレベル感です。

参考:Nレベルについて

N1~N5:認定の目安 | 日本語能力試験 JLPT
国際交流基金と財団法人日本国際教育支援協会が運営する日本語能力試験・公式サイトです。日本語能力試験は、日本国内および海外において、日本語を母語としない人を対象として日本語の能力を測定し、認定することを目的として行う試験です。

ベトナム人技能実習生への日本語教育体制

ベトナムの多くの送出し機関では、技能実習生を送出し機関のに住まわせます。集団生活に慣れさせる、自炊や部屋の掃除の習慣をつけさせる、日本のルールを教える、日本語の授業に遅刻/欠席させないようにする、等の教育のためです。

日本語の授業での学びは、日本語の勉強だけではありません。日本の生活・文化に関する授業や、就業予定の会社の専門用語の勉強、日本人の働き方、税金などの法律についての勉強も行います。

1日のスケジュール例

下表は、送出し機関で技能実習生が過ごす1日のスケジュールの例です。

6:00-7:00起床、朝食、ラジオ体操
7:00-7:30ゴミ拾い、掃除
7:30-8:00朝礼
8:00-12:00授業
12:00-13:30昼休み
13:30-17:30授業
17:30-18:00運動、体力づくり
18:00-20:00夕食、自由時間
20:00-22:00自習
22:00-点呼、就寝

これが月曜〜金曜日まで続き、土日は休日というパターンが多いです。1日8時間の勉強+自習や運動…。かなりみっちり予定が詰まっており、ハードな印象を受けます。

このハードスケジュールを4-6ヶ月こなしてから来日するというわけです。

教材

多くのベトナム送出し機関では、『みんなの日本語初級1,2』がメイン教材として使用されています。

本語の文法を簡単なものから1つずつ勉強していくスタイルの教材です。

他の人気な教材としては、
・新日本語の基礎
・『耳から覚える』シリーズ
・『総まとめ』シリーズ
などがあります。

授業の教え方、教師の経歴

多くのベトナム送出し機関では、「教師→生徒」という方向性の情報伝達型の授業です。教師が教科書にある日本語の文法や単語の解説をし、生徒(技能実習生)はそれをノートに書き写す、というような方式です。

会話を練習する授業であっても、教師が生徒(技能実習生)を順番に当て、音読をさせたり、一問一答の質疑応答を行うような場合が多いです。

また、ベトナム送出し機関の日本語教師は元技能実習生であることがほとんどです。そのため、技能実習の実情や日本での働き方について具体的に指導ができます。ただ、日本語レベルや専門性があまり期待できないという点や、自身の経験に頼りすぎてしまうというデメリットもあります。日本人教師はほとんどいませんが、リタイアされたご高齢の方や、大学生のインターン、アルバイトなどの方が時々います。

来日前の技能実習生の日本語レベルが知りたい場合は…

ベトナム送り出し機関では、毎月技能実習生の日本語学習レポートを作成していることが多いです。このようなレポートは毎月送出し機関から監理団体(組合)へ送付されています。

来日予定の技能実習生の日本語レベルを確認されたい場合は、監理団体(組合)へ問い合わせてみてください。

ベトナム人技能実習生の入国後の日本語教育の現状

次に、ベトナム人技能実習生の入国後の日本語教育の現状について解説します。

1ヶ月の法定日本語講習期間

技能実習生は日本入国後、最低1ヶ月間は日本語を勉強しなければなりません。来日後の技能実習生の日本語教育については、監理団体(組合)か、監理団体が委託している日本語学校が実施します。

そこでは、日本語の勉強、日本の生活・文化の勉強、集団生活のルールなどを学びます。ここにはベトナムだけでなく、様々な国からの技能実習生が在籍しています。

送出し機関の学習との違いとして、

・来日して気持ちを新たにし、日本語学習に取り組める
・専門知識や経験ある教師から日本語が学べる
・日本人から日本語が学べる
・日本人と話す機会が増える
・他の国から来日した外国人技能実習生と日本語で会話ができる
・異文化理解が進む

などが挙げられます。

ここでの1ヶ月の教育が終了すると、ついに受け入れ企業に配属されます。

技能実習生の日本語能力要件

技能実習生は、法律で

・入国前に1ヶ月(160時間)以上の講習
・入国後に1ヶ月(176時間程度)の講習

を受講することが義務付けられていますが、具体的な日本語能力レベル要件は設けられていません。(介護を除く)

ですので、

・日本でお金を稼ぎたい
・友達が日本へ行ったから自分も行きたい

というような動機で入国する技能実習生の中には、日本語学習のモチベーションがなかなか維持できない方も多いです。

しかし、技能実習生は入国後1年以内には技能実習評価試験の学科試験に合格しなければなりませんので、ご留意ください。(不合格の場合は、即帰国となってしまいます。)

リアルなベトナム人技能実習生の声

最後に、リアルなベトナム人技能実習生の声をまとめましたので、いくつかご紹介します。

以下は全て、

参考論文

在日外国人労働者に対する日本語指導研修の改善―ベトナム人技能実習生の日本語習得の現状を事例として―(2020, PHAN)

からの引用です。

・技能実習によって、何を獲得したいですか

・日本語学習の難しさを評価してください

・技能実習で学んでいる仕事に対して自信がありますか

・仕事に対する自信がない理由はなんですか

・技能実習後に希望するキャリアを教えてください

最後に

本記事は、

・ベトナム人技能実習生がどのくらい日本語が話せるか知りたい

・ベトナム人技能実習生がどのように日本語を勉強しているのか知りたい

・ベトナム人技能実習生の日本語学習に対するリアルな心の声を聞きたい

このような方向けの内容になっています。

本記事では、ベトナム国家大学ハノイ校日越大学の修士論文の記載事項をいくつか引用しています。詳細まで気になる方はこちらをご覧ください。

在日外国人労働者に対する日本語指導研修の改善―ベトナム人技能実習生の日本語習得の現状を事例として―(2020, PHAN)

その他の部分は、私の経験や知識によるものです。もし間違い等見つけられた方がいらっしゃれば、お問い合わせいただけると助かります!

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